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文字通りの「最終回」に先立って場内アナウンスが流れました。『大会の規定により、この回を終了して勝負が決まらない場合、試合は明日に再試合となります』。高校野球ファンならご記憶にあるのではないでしょうか。このアナウンスが甲子園に流れるのは、ちょうど10年ぶり。そう、史上初・決勝戦での延長18回0−0引き分けで戦後スポーツ史の奇跡と称賛された、あの「三沢×松山商」戦以来であります。あの死闘から早10年ですか、まるで昨日のことのようですが、我々は今また新たに“激闘の記憶”に加わろうかという名勝負を見届けることになるわけです。時刻はまもなく19時35分、18回表の星稜の攻撃が始まりました。

[18回表]星稜
3番北が遊ゴロで1死。《最終回、もう細かい指示はない。ただ、石井投手はまもなく250球、体力を消耗して球のキレがなくなっている。コンパクトに振り抜いていけばチャンスは必ず来る。あきらめるな!》4番川井は期待に応えて中前安打で出塁、この日4安打の大活躍です。1死一塁から5番堅田もこれまたきれいに中前安打。堅田は3安打、星稜は打ちも打ったり、実に18本目のシングルヒットであります。
6番音はシュートを詰まらされて平凡な三飛に倒れて2死一二塁。しかし、続く7番山下が見事にピッチャー返し「抜けたーっ!!」中前に抜ける痛烈なヒット。大歓声の中を二塁走者の川井は三塁を回りかけましたが、当りが良すぎてホームは間に合わないと見た三塁コーチャーが止めました。この回、3本の中前安打を揃えて2死満塁!!星稜の安打はついに19本。箕島は重大なピンチを迎えています。
ここで山下監督が動きました。7打数ノーヒット3三振の石黒に代えて代打久木を送りました。《久木は1年生音の先発で控えに回っていたが本来はレギュラー。宇治戦では2安打4打点と活躍、まさに切り札だ》久木はファウルで粘ってカウント2−2。石井が渾身の力を振り絞って投じた6球目!「空振り三振!」星稜、打って打って打ちまくりましたが無念の三者残塁です。石井毅は257球、18回を投げ切って、この瞬間に箕島の負けはなくなりました。星綾の最終回の守りは代打の久木を右翼に入れて音をベンチに下げ、二塁に1年生高桑を起用します。
[18回ウラ]箕島
さあ、今度は箕島の最終回の攻撃。尾藤監督も動きました。先頭の2番宮本に代えて代打辻内の起用です。代打策が功を奏して辻内は四球で出塁、無死でサヨナラのランナーが出ました。堅田は7回以降無四球を続けてきましたが、12イニングぶりの四球は明らかに疲労の影響でしょう。《堅田は肩で息をするほど疲れ切っている。定石通りスコアリングポジションに送って4番5番に期待したい。低めの変化球を捨ててストレートを狙い打て!》ところが3番上野山はスリーバント失敗(記録は三振)で1死一塁。
この日7打数ノーヒットだった4番北野のところで、堅田の制球が乱れ出しました。堅田の投球数は上野山のときに200球を越えています。カウント0−3から4球目も外れてストレートの四球!「どうした堅田」あと二人という場面で苦しい投球になっています。《疲労だけではない。勝ちがなくなった18回ウラにきて、目に見えない重圧が堅田に押し寄せているはずだ》5番上野はボールをよく見てカウント0−2。心配した星稜内野陣がタイムを取ってマウンド上の堅田のところに集まっています。さあ、試合再開。《ストライクを取りに来たらチャンスだ、好球必打で行け!》堅田、第3球を投げました。内角高めの絶好球だ「上野、打ったー!!打球はショート北の頭の上!」北がジャンプ一番、届かない!「ショートオーバーのレフト前ヒット!」二塁走者辻内が三塁を回ってホームに猛然と突進してくる!「レフト金戸のバックホームは、あーっ間に合いそうにない!」今、辻内がヘッドスライディングでホームイン!!「サヨナラ!サヨナラゲーム!」まさに球史に残る真夏の夜のミラクルゲームは、最後の最後、延長18回ウラに決着。箕島が星稜に4−3の劇的サヨナラ勝ちで幕を閉じました。

時刻は19時56分、3時間50分に渡る激闘に今、終止符が打たれました。実に延長18回、大会規定による引分目前でとうとう決着したのであります。
※本文中の《青文字》ベンチの采配作戦の狙いをシミュレーションしています。 スコアシート最終版

昭和33年に18回打ち切りという大会規定ができて以降、選手権第40回大会(昭和33年)の「徳島商 0−0 魚津」、46回大会(昭和39年)の「掛川西 0−0 八代東」、51回大会(昭和44年)の「三沢 0−0 松山商」はいずれも無得点の引き分けになっています。またセンバツでは昭和37年に「作新学院 0−0 八幡商」が引き分け再試合になっています。大会規定の施行後、延長18回で決着がついたゲームは、春夏通じて史上初めてでした。なお、箕島は決勝で池田(徳島)を終盤8回の逆転劇で下し、公立高校として史上初の春夏連覇という偉業を達成しています。
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